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第1回公演上演記録

作:ウジェーヌ・イヨネスコ  翻訳:加藤新吉

演出:篠本賢一

「犀」

 

■公演日程
2014年10月24日(金)~26日(日)

 

 24日(金) 13:00~・18:30~

 25日(土) 14:00~
 26日(日) 14:00~

■チケット料金
前売り:3000円(前売り発売予定日8/25)
当日 :3300円
ペアチケット:5500円

 

■劇場

上野ストアハウス
東京都台東区北上野1-6-11 ノルドビルB1

■キャスト

ベランジェ       藤田三三三(客演)

ジャン         東條将孝

デイジイ        青木 恵

主婦          福島 睦

食料品店の亭主     甲斐照康

食料品店の女房     田中淳子

カフェの主人      丸本育寿(客演)

カフェの女給      脇田美穂子

老紳士         向後正枝

論理学者        小池恵子

パピヨン部長      菊地伸二・甲斐照康(Wキャスト)

デュダール       丸本育寿(客演)

ボダール        柘植英樹(客演)

ブゥフ夫人       鳴海逸美

消防夫         久保貴志

ムシュウ・ジャン    宮下文子

ムシュウ・ジャンの妻  鈴木里花

■スタッフ

照明:青木慶太(ライトK)/音響:山田健之/美術:篠本賢一・菊地伸二/衣裳:青木恵/舞台監督:森山香緒梨/振付:石川弘美/写真:宮内勝/ビデオ撮影:大塚登(東京舞台映像)/チラシイラスト:村上洋子/チラシデザイン:前嶋のの/制作:高橋俊也(THEATRE-THEATER)/制作助手:鈴木里花・服部次郎

■協力:テアトルアカデミー/遊戯空間/アトリエそら/ライトK/有限会社プロダクション・タンク/株式会社エ・ネスト/有限会社創新企画

■あらすじ 

ある街に突如として犀が出現する。人々は慌てふためき逃げ回りながらも、この動物がいったいどういう訳でこんな街中に出現したのか、アジアの犀だったのか、アフリカの犀だったのか等いろいろ想像したり議論したりする。

結局犀は猫を一匹踏み殺した挙句どこかに去っていくのだが、人々はこの事件を忘れることができず、そうしているうちに彼らは段々と犀に変身し始め、行列を作って街中を暴れ回るようになる。やがて犀は世界中の人間に取って代わり、最後に一人の男が残される。

 

■作者:ウジェーヌ・イヨネスコ Eugene Ionesco

1909年11月26日-1994年3月28日、フランスで主に活躍したルーマニアの劇作家である。

フランス不条理演劇を代表する作家の一人として知られている。イヨネスコは平凡な日常を滑稽に描きつつ、人間の孤独性や存在の無意味さを鮮やかに描き出した。

こうした(しばしば「不条理」と呼ばれる)世界観はイヨネスコのみならず、二度の世界大戦を経験した同世代のサルトルやカミュなどの作品にも見いだされる。代表作に「禿の女歌手」、「授業」、「椅子」等がある。

 

■演出:篠本賢一

1961年東京生まれ。「遊戯空間」主宰。俳優、演出家。

故観世榮夫より能を学び、古典芸能を視野に据えた現代劇創作を展開。現在、一般社団日本演出者協会常務理事、杉並演劇祭審査委員、映画甲子園審査委員などの任に就く。

最近の演出作品に『夜叉ケ池』『天守物語』『怪談牡丹燈籠』『全段通しリーディング仮名手本忠臣蔵』『詩×劇 つぶやきと叫び-深い森の谷の底で』などがある。劇団 櫂人には旗揚げから参加している

 

■上演意図 

劇団旗上げより3年目を迎えた2014年、これまで蓄えてきた力をいかんなく発揮し、劇団 櫂人の存在を世間一般にお披露目し、「これからの劇団活動のための第一歩にしよう」との意欲を携え初めての自主制作による劇場公演を企画した。

 

「犀」は、社会や文化に於ける全体主義と個人主義の対比、つまり、常に多数は少数より正しく正義であるのか、という重い問題を投げかけている。また、政治的・社会的イデオロギーや流行等が持つある種の暴走的感染力に対峙した場合の、個人の在り方に対して、観客の意識を喚起しうる作品である。これは、現代の社会の問題を浮き彫りにしうる普遍的な名作であるといえる。このような作品を劇団櫂人は上演して行きたい。

私たちは、表現手法においても、テーマ性においても作品と真摯に向き合いたいという思いがある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

写真撮影:宮内 勝

<公演終了後の報告>

 劇団櫂人旗揚げ公演「犀」は、連日満席の盛況で打ち上げることができました。ご来場いただきました皆様に心よりの感謝を申し上げます。

 反省会ではいくつかの課題や問題点も指摘されました。

 

<演目について>

 20世紀後半の不条理劇を代表するイヨネスコの名作「犀」を取り上げたことは、「人間の普遍的テーマを扱った古今東西の本格的な戯曲の上演」を劇団コンセプトにする劇団櫂人として正しい選択であったといえるでしょう。しかし、主要なキャストを客演に委ねなければならなかったことは、劇団の力不足を露呈していて、劇団員の一部からは「身の丈に合った演目を選択すべきであった」という意見も出ていたことは忘れてはならないでしょう。

 

<客演について>

 単に男優の数が足りなかったというだけでなく、劇団員でまかなえるだけの力量もなかったために主役を始めとする主要なキャストを3人のベテラン俳優に客演していただきました。観に来ていただいた方からは「旗揚げ公演なのに主役は客演なの?」「客演と劇団員の力の差が歴然だね」との感想をいただいたり、上述した「身の丈に合った芝居」という思いもあったりして、劇団員たちも複雑な心境を隠せませんでした。しかし、客演していただいた3人のベテラン俳優さんたちからは、稽古に臨む姿勢からして演劇人としてのあり方をたくさん教えていただきました。客演の方々の熱演のおかげで「犀」という困難な芝居の質を高めることができただけでなく、劇団として公演を打つことはどういうことかも学ばせていただきました。客演として3人のベテラン俳優に来ていただいたことは旗揚げ公演成功の大いなる要因であったと感謝しております。

 

<稽古に臨む姿勢について>

 「犀」の一幕目は会話が複雑に絡まり合う難しい場面です。集中力を高く保てないと、タイミングよく台詞が出てきません。公演の二週間くらい前になっても、台詞が出てこない劇団員がいて、稽古はしばしば滞りました。客演の俳優と不慣れな劇団員との呼吸が合わず、演出家も強くそのことを指摘しました。「台詞は立ち稽古の前には完璧に入れておけ」という演出家の当然の指示ができている客演者とできていない劇団員との差異が痛烈に浮かび上がります。劇団員はベテラン俳優とはキャリアが違うのだから、もっと早くから稽古を始めて、もっと多くの時間を稽古にかけねばならないということを痛切に感じました。

 

<スタッフ面について>

 舞台監督・照明・音響・振付・制作などは、プロのスタッフさんに委託しました。専門的・技術的なことはプロのスタッフさんにお任せするにしても、劇団員として演技面ばかりに気を取られず、公演全体に関ろうとする意識も持つべきです。芝居の稽古にだけ追われて、スタッフ面がどうなっているのか、ほとんど不明の状態でした。毎週一回くらいは劇団員全員でスタッフ会議を開いて、各部門の進行状況を確認するべきでした。

 

<総括>

 イヨネスコの世界的名作「犀」を上野の小劇場を満席にして4回公演打ち上げたこと、しかも客演の力にも助けられてかなり高いレベルで上演できたことは劇団櫂人の旗揚げ公演として大成功であり、よいスタートを切ったといえるでしょう。

 但し、劇団員の稽古に臨む姿勢の緩さやスタッフ意識の希薄さには反省すべき課題も多くありました。また、「主要なキャストを客演に依頼しなければならない劇団としての力量不足」も課題として指摘され、「身の丈に合った芝居をやるべき」との意見も見られたことは今後の検討課題となるでしょう。

                                  (公演終了後の文責:服部 次郎)

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